インサイド・レポート

2年間の成果とその背景を事業担当にきく(2)「ソーシャル・アジェンダ・ラボ」石川孔明

石川孔明(ETIC. SAL事業担当)

3月に終了する、ソーシャルビジネスエコシステム創出プロジェクト。

ソーシャル・アジェンダ・ラボ(SAL)」の事業担当・ETIC. 石川孔明に、2年の総括と、今後の展望を聞きました。

–ソーシャル・アジェンダ・ラボ(以下SAL)は、この2年で新たに始まったプロジェクトでした。その最初の2年間が終わろうとしていますが、2年間を振り返ってみて、いかがですか?

石川 私自身が、ETIC.にジョインしたのが、2年前ですが、同じタイミングでソーシャル・アジェンダ・ラボというリサーチ部門が立ち上がりました。最初の動機は、社会起業家がいる意味であるとか、今後世の中において、社会起業家がどういう位置を占めていくことに興味がありました。

船木さんや山内とのディスカッションの中で、凄く壮大な話になり、世の中のアジェンダを全て可視化しましょう!という話も、ありましたね。この人たちが言うなら出来るに違いないと思って、ETIC.にジョインしましたが、実際にはそんなに簡単ではなかったです(笑)
この2年で、世の中に対して役に立つリサーチを精度高く作れるようになりましたから、あらためて当初やろうとしていたことに、一周ぐるっと回ってトライできるのかなと思っています。

–この2年間でどのような成果があったのでしょうか?
石川
2年間で、50のリサーチプロジェクトを、153人の「アソシエイト」と呼んでいるプロボノリサーチャーの力で行いました。

この2年のリサーチプロボノのプロジェクトで一番見えてきたのは、普段ビジネスセクターで働いている人たちの力が、どうすれば一番活きるのかということです。何をリサーチすべきかというテーマ設定と、どういう風に力を結集するべきかという方法の2つがわかってきたと思います。この2年で貯めたノウハウを、今後、他の地域にも展開できるのではと思っています。

「ビジネスセクターで働いている人たちの力が、どうすれば一番活きるのか、この2年で見えてきました」(石川孔明)

–リサーチという、起業家やベンチャーにとって後回しになりがちな部分を、それに長けた人たちが担ってくれるという仕組みの、効果的な回し方がわかってきたんですね。

石川 ノンプロフィット、ソーシャルベンチャーにおいて、2つの意味でリサーチが必要だと思っています。一つは、イシューをリサーチするということで、もう一つはインパクトをアセスメントするということ。この両方でニーズがあるので引き続きやっていきたいと思っています。

–ビジネスセクターにいながら、その仕事のスキルを活かして起業家の事業づくりを支えるプロボノの存在にフォーカスをあてたプログラムは、この2年で生まれた新たな視点でしたね。

石川 これまでETIC.では、起業家にフォーカスを置いたプログラムが多かった中で、 “支援者”というポジションが出来たのは大きかったと思います。働きながらそういうことができるんだ、とか、あるいは自分自身の起業を前提に、まずはこういう場でネットワークやスキル、ノウハウを蓄積できる、と考える人たちの場が出来たことが大きいと思います。

–SALを経験した人たち同士のつながりが、今も続いているようですね。

石川 SALで動いた人たちが、その後もゆるく繋がり続けていて、例えば20人くらいの飲み会の場に、スタートアップマーケットの起業家が来て、相談にのったり、共感して寄付をしたり、スキルを提供したり、ということが自然発生的に生まれるようになっています。
このような動きを、さらに継続的になるようにしたいですし、この人たちを軸に、更に多くの人を今後も巻き込んでいきたいです。

–「どうすればビジネスセクターの人たちの力がより発揮されるのか」という問いは、プロボノに限らず、普段の仕事を面白くしたい個人、ひいては企業にとっても面白いテーマですね。
石川
そうなんです。プロボノだけでなく、会社の中でやる仕事そのものが、どれだけに面白く出来るのかという話は、取り組んでいくべきだなと思っています。
さきほど言った、2つのリサーチで言えば、企業にとっては、特にイシューをリサーチするという部分が、何かしら次の取り組みの種につながると思うんですね。我々は、社会にあるイシューを集められますから、今後企業に、イシューと取り組みの種を提供し、ソリューション部分を企業の方達に開発していただく、というのは、面白いのではないか、と考えているところです。

–プロボノをする個人へのアプローチを、次は企業や組織の単位にも応用していきたいですね。
石川
個人だけでなくて、法人のソーシャル化というものもやっていきたいと常々思っています。これまで、実は正確にイシューを特定できていない、ということが結構あると思います。その問題が、なぜ、どういう背景で発生しているのか、深堀しきれていない。人間一人の行動レベルに落ちていない。だからソリューションが打てない、ということだと思います。この部分をしっかり特定できたら、ビジネスのシーズにすることも、新しいイノベーションに繋げることもそんなに難しいことではないと思っているんです。

世の中のアジェンダの可視化という当初の構想に近づいてきていますね。

(聞き手:井上有紀(慶応義塾大学SFC研究所ビジティング・シニア・フェロー))

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