インサイド・レポート

ETIC.には、なぜ起業家と、元気な若者が集まっているのか?(中)

ミクシィ、DeNA、楽天、オウケイウェイヴ、ネットエイジ、ガイアックス、
イデアインターナショナルなどは、ETIC.開始当初から、ETIC.からのインターンを受け入れてきた
会社だ。創業当時数人で立ち上げたベンチャー企業だった彼らは、その後、成長に成長を重ね、
どの企業も上場を果たすほどに拡大している。

この15年、ETIC.の周辺から、多くの若い起業家、社会起業家が生まれ、
彼らを応援するために、多くの先輩起業家、経営者、ビジネスパーソンらが集まり続けている。
それはなぜだろうか?

(筆者:井上有紀(慶應義塾大学SFC研究所ビジティング・シニア・フェロー))

関連記事:『ETIC.には、なぜ起業家と、元気な若者が集まっているのか?(上)』

■起業家と若者の挑戦を、インターンシップという方法で後押しする。

「受け入れ企業が費用を負担する」というのがETIC.のインターンシップ事業の特徴だ。
これは、事業開始当初からの、ETIC.のポリシーでもある(*1)。

事業開始当時、インターンシップを事業化していた会社は日本にはなかった。
企業がお金を払ってでも、インターンの学生を受け入れたくなるような、価値のあるプログラムを
提供できるか、受け入れ側に負担となるインターンシップではないプログラムを設計できるかが、
勝負だった。

当時を振り返って、山内幸治(現ETIC.統括ディレクター)はこう話す。

「経営者たちに話をする時、その会社が成長するための、要となる事業は何なのか、
必死に考えましたね。
今後主力となるだろう事業に『意欲の高い若者を入れて、さらに成長を加速させませんか』と、
経営者のビジョンの実現に、本気で思いをよせて提案しました。
“学生インターンを受け入れてください。”という言い方はしなかったですね。」

インターンシップの実現が目的ではなく、ベンチャーの成長と、若者の成長が目的であり、
インターンシップはそのための手法であるということの理解を得るよう、働きかけていった。

■創業期の会社や、新事業に乗り出したい中小企業が成長する
ETIC.のインターンシップ

実際、創業間もないベンチャー企業は、意欲の高い若者との出会いを必要としていた。
正社員を雇うほどの余裕は無いし、リスクを冒せない。しかし、企業の成長のスピードにあわせて、
するべきことはいくらでもある。ベンチャー経営者やベンチャーを支援するコンサルタントらは、
ETIC.のインターンシップに関心を示した。

それに加えて、「起業家の、新たな事業への挑戦には、本気でコミットする若者が力になるはずだ。」、「次世代を担う、若い人の起業家精神を育てたい」という宮城・山内の思いに触れて、起業家たちは、インターンの受け入れを承諾した。


上田祐司さん(株式会社ガイアックス  代表執行役社長CEO)

当時から受け入れ企業となった、株式会社ガイアックスの上田祐司氏(代表執行役社長CEO)はこう話す。

「起業家と学生を出会わせ、ベンチャー起業家を育てる、
というETIC.の事業に共感しました。
『人と人をつなげる』、『独立した人間をつくる』
というのが、ガイアックスがビジネスを通して
目指していることです。ですから、ETIC.から
学生を受け入れることは、ある意味当然のことでした。

そもそも、ETIC.の交流会を通じて、ガイアックスの
今の仲間と出会ったんです。立ち上げメンバー5人の
うち、3人は当時学生でした。

チャンス溢れる人たちに、ガイアックスで働くことで、
自分で何でもできるんだ、という、価値観を持っていただきたいと思っています。ETIC.はいつも優秀な人を送りこんでくれていますし、結果、インターンを卒業した後、会社を作って活躍している方がたくさんいらっしゃいますね。また今も社員となって活躍してくれている人もたくさんいますよ。」

■経営者の隣で、起業家精神を浴びるように学ぶ若者たち。
思いを共にする若者に勇気づけられ、ビジョンの実現に邁進する起業家たち。

 株式会社ウィンローダーの高嶋民仁氏(代表取締役)は、「インターンで、会社に新しいドライブがかかった」と話す。ETIC.から学生インターンが入ったのは、高嶋氏が3代目社長として、ウィンローダーの経営を引き継いだ2004年だ。

「運送業界というのは、旧態依然として、うまく
いかない会社もありました。たとえば、慶應の学生が、
運送業の中小企業を就職先として選ぶかと言ったら、
選ばない。これから自分の人生をかけて、数十年
やっていくのだから、魅力的な会社にしたい、
若い人たちがたくさん入ってくる会社にしていきたい。
そう思った時に、出会ったのが、ETIC.でした。

就任と同時に作った、新規事業で新しいドライブを
かけながら、60年続いている中小の運送会社に、
新しいビジョンを打ち出して行きたい。
そういうお話をしたら、ETIC.が、ビジョンを含めた
会社の根底から、一緒になって考えてくれたんですね。」

20代で社長に就任し、新規事業にも果敢に取り組むような
会社の体質に変えていくのは、大きな挑戦だったに違いない。

「60年続く会社ですから、自分よりも前に入っている社員も多くいる。
中には、漫然とした気持ちで働いている人もいたわけです。その中で、社長になって、新風を巻き起こす、ということは、なかなか難しいことで、本当に挑戦でした。

ETIC.が送り込んでくれた、インターンたちと一緒でなければ、心が折れてしまったかもしれない。きっと、ここまでできなかったですよ。

彼らは会社を変えていきたい、という僕の思いと一緒になって、既存の社員とも向き合ってくれた。
こんなに有り難いことはなかったですよ。おかげで、少しずつ会社が変化していって、
今では社員全員が、新しい事業にチャレンジしていく意識でいますし、
優秀な新入社員がたくさん入ってくるようになりました。(高嶋氏)」

(下)につづく)

(*1:行政などが推進するインターンシップの場合、受け入れ企業に対して謝金を支払って、学生を受け入れてもらうことが多い。)

関連記事:
『ETIC.には、なぜ起業家と、元気な若者が集まっているのか?(下)』
インサイド・レポート(ひと編)『インターンを受け入れる起業家の声:株式会社ウィンローダー 高嶋民仁さん(代表取締役社長)』



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